「総合型選抜(AO入試)や学校推薦の際に評定平均が大切って言われるけど、評定平均ってなに?内申点とは違うの?具体的に教えてほしい」
保護者も生徒も一度は『評定平均』という名を聞いたことがあると思いますが、
- 具体的になんなのか?
- どう計算されるのか?
- 総合型選抜(AO入試)や学校推薦の際、どのような影響があるのか?
よく分からない方も多いのではないでしょうか?
この記事では、元教員である筆者が『評定平均』について詳しく解説していきます。
この記事を読んでわかること
- 総合型選抜(AO入試)や学校推薦に利用される『評定平均』について詳しく解説します
もくじ
評定平均ってなに?
評定平均とは、
- 高校1・2年生の3学期(後期)の成績と、高校3年生の1学期(前期)の成績の平均
のことです。
履修した科目の5段階評定をすべて合計して、すべての科目数で割った数値が評定平均となります。
実は、結構シンプルな内容なんだね
そうなんです。
あまり難しく考える必要はありません。
評定平均は、高校での成績が数値化されているため、推薦入試で出願するとき、重要な評価材料とされています。
高校によっては10段階で評定を出していることがあります。
その場合は、5段階に置き換える必要があります。
学校によって置き換える基準が違いますが、基本的には
- 9・10=「5」
- 7・8=「4」
- 5・6=「3」
- 3・4=「2」
- 1・2=「1」
となります。
この置き換える基準については、各学校の通知表に記載があるはずです。
なるほど。だけど、そもそも評定って、どうやって付けられてるの?
そうですよね。
令和4年度(2022年度)から、高等学校の新学習指導要領が実施されています。
それにともない、評価を行う観点というものが新たに定められました。
観点は小中学校と同様に3観点になりました。
具体的には
- 「主体的に学習に取り組む態度」
- 「知識及び技能」
- 「思考力・判断力・表現力」
の3つです。
この3観点をそれぞれ A・B・Cの3段階で評価します。
それをもとに5段階の評定を付けていきます。
例えば、観点別評価が「AAA」であれば「5」、「AAB」なら「4」のような形です。
この3観点は、すべての学校、すべての教科(科目)で共通となります。
しかし、それぞれの観点を、どのような授業材料から点数化して見取っていくかは各学校や教科(科目)の裁量で、学校ごとに違います。
詳しくは「評価を上げるための対策」の項で説明していきたいと思います。
評定平均の元となる『評定』の付け方は学校によって違うってことだね
昔は、定期考査の得点のみで評定をつける高校もありましたが、新学習指導要領では、3観点を意識した評価評定が求められています。
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評定平均と内申点ってどう違うの?
『評定平均と内申点ってなにが違うの?』
という質問をよく受けます。
簡単にまとめてみます。
- 評定=各教科を5段階で評価づけをしたもの
- 内申点=5段階評定をもとに点数化したもの
- 内申書=公立高校受験の際に受験校に送られる「内申点」を記載した書類を「内申書」という
- 評定平均=大学の推薦入試の際に使用される数字のこと(内容は前項を確認ください)。大学受験では内申点ではなく評定平均が利用される
ちょっと分かりづらいですよね。
なので簡単に言うと、受験生にとって、評定平均と内申点の違いは
- 「大学受験で利用されるか」
- 「高校受験で利用されるか」
の違いと覚えると簡単です。
なるほど。それだと分かりやすいね!
評定平均は、大学の推薦入試のときに使用される数値です。
推薦の基準として使用されます。
高校入試では、評定平均を出す場面はほとんどありません。
一方、内申点は、高校受験のときに使われるものです。
中学校の教科は全部で、国語、数学、英語、理科、社会、美術、技術家庭科、保健体育、音楽の9教科です。
この合計、つまり9教科×5段階=45点(満点)が内申点といわれるものです。
ただ、45点満点そのままで使われることはほぼありません。
高校入試で使用される内申点の扱い方は、各都道府県によってかなり違いがあります。
3年間の合計(45点×3年分)で内申点とする地域もあれば、3年生分だけ3倍にして合計を出す地域もあります。
そのため、元教員からすると、都道府県をまたがって高校受験をする場合、内申点の算出方法の違いで戸惑うことがあります。
この内申点と試験当日の得点で合否が判断されることが基本です。
これが高校受験です。
反対に大学受験で使用される評定平均は、成績の合計を科目数で割るだけの算出方法のため、都道府県による違いはありません。全国共通の計算方法です。
つまり、
- 大学入試で使われるのが評定平均
- 高校入試で使われるのが内申点
これが分かりやすい評定平均と内申点の違いです。
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評定平均の計算方法は?
評定平均の計算方法について説明します。
評定平均は、履修した科目の5段階評定のすべての数値を合計して、すべての科目数で割ったものです。
簡単にいうと、通知表に記載されている数字をすべて足して、科目数で割るということです。
例えば、
高校1年生の3学期(後期)の成績の合計が40、科目数が12だとしたら、
40÷12=3.333
となります。
評定平均は、小数点以下第2位を四捨五入して表記する決まりがあるため、この生徒の高校1年生の評定平均は「3.3」ということになります。
高校2年生の3学期の成績の合計が44、科目数が13だとしたら、
44÷13=3.384
です。
同じように四捨五入すると「3.4」となります。
高校3年生の1学期の成績の合計が48、科目数が14だとしたら、
48÷14=3.428
です。
評定平均を使用するのは、推薦の時期、つまり高校3年生の2学期中なので、
高校3年間分を合計して算出すると、
- 成績の合計(40+44+48)÷ 科目数の合計(12+13+14)= 3.384
つまり、この生徒の推薦出願時の評定平均は「3.4」ということになります。
また、受験する学校によっては「全体の評定平均」の他に「教科別評定平均」を求めるところもあります。
募集要件が「全体平均評定4.0以上、英語4.3以上」などというケースです。
算出方法は同じで、該当教科の成績の合計を該当教科の科目数で割ります。
例えば、国語であれば「国語総合」「現代文」「古典」と3科目あることが多いため、3年間の国語の成績の合計を科目数の3で割ると「国語科の平均評定」が出る、ということです。
少し分かりづらいですが、理解しておくと自分の状況を把握しやすいと思います。
評定平均って、総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜にどんな影響があるの?
評定平均は、総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜においてとても重要な要素です。
その理由を、まずは総合型選抜(AO入試)から解説します。
総合型選抜(AO入試)における評定平均の重要性
総合型選抜(AO入試)では、出願資格に「全体の評定平均4.0以上」など評定平均の基準を設けている場合が多いです。
4.0!評定平均の出し方を知ってしまうと4.0のハードルの高さが分かるね!
詳しい基準値の例は別項に記載しますが、この基準に達していないと出願できない学校がほとんどです。
また、慶応義塾大学の法学部FIT入試のように、A/B方式を採用している大学があります。
慶応義塾大学のA方式は、評定平均に関係なく出願できますが、B方式は「全体の評定平均が4.0以上、かつ国数英社で4.0以上」という出願基準があります。
この基準であれば、Bの倍率はAに比べて圧倒的に低くなります。
A/B方式は併願が可能なため、評定平均4.0以上ある受験生はA方式しか出願できない受験生に比べ、合格率が格段に上がることがわかります。
なるほど!受験のチャンスが2回あるってことだもんね。
このように、A/B方式やA/B/C方式を導入している大学を受験する際にも、評定平均は大きな影響があるといえます。
また、文部科学省は総合型選抜(AO入試)について
- 「詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって、入学志願者の能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に評価・判定する」
と明記しています。
このことから、評定平均を含めた調査書の存在が重要であることがわかります。
学校推薦型選抜における評定平均の重要性
次に、学校推薦型選抜において、評定平均が重要な理由を解説します。
学校推薦型選抜は、
- 公募制
- 指定校制
の2つがありますが、どちらも出願時に学校長の推薦(学校推薦)が必要となります。
この学校推薦を得るための校内選考の基準に、評定平均や課外活動の記録が使用されます。
この選考を通らなくては、推薦受験の資格が得られないため、評定平均が重要なのです。
学校推薦型選抜について、文部科学省は「出身高等学校長の推薦に基づき、調査書を主な資料としつつ」と明記しています。
この「調査書」に評定平均が含まれているのです。
課外活動の記録は何とも言えないけど、評定平均に関しては明確に自分でなんとかできることってことだね
以上のように、総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜では、評定平均の数値によって志望校に出願できるかどうかが決まることがあります。
また、出願後も評定平均によって合否が判断されることになります。
そのため、評定平均は、総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜にとって重要な要素といえるのです。
-
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大学別総合型選抜に必要な評定平均値例
では、次に実際の有名大学の評定平均値の例を挙げていきます。
記事執筆時、2023年5月時点でのデータになります。
東京大学
- 学校推薦型選抜のみ実施
早稲田大学
- 評定平均の基準なし
慶応義塾大学
文学部 | 全体の評定平均4.1以上 |
法学部(A方式) | 評定平均基準なし |
法学部(B方式) | 英国数社および全体の評定平均4.0以上 |
理工学部 | 数理の評定平均4.0以上 |
看護医療学部 | 評定平均4.5以上 |
上智大学
文学部 | 全体の評定平均4.0以上 (英語4.5以上の学科あり) |
総合人間科学部 | 全体の評定平均4.0以上 |
法学部 | 全体の評定平均4.0以上 |
経済学部 | 全体の評定平均4.0以上 (英語4.5以上の学科あり) |
外国語学部 | 全体の評定平均4.0以上 および外国語・国語それぞれ4.3以上 |
理工学部 | 全体の評定平均4.0以上 |
東京理科大学
総合型選抜(女子) | 数学および理科の評定平均がそれぞれ4.0以上 (2024年度) |
学習院大学
国際社会科学部 | 評定平均の基準無し (指定の英語資格、検定試験の基準あり) |
明治大学
文学部 | 全体の評定平均3.5以上 |
農学部 | 全体の評定平均4.0以上 (学科によって4.3以上もあり) |
国際日本学部 | 全体の評定平均4.0以上 |
総合数理学部 | 数学の評定平均4.0 以上 かつ理科の評定平均3.8 以上 |
青山学院大学
文学部文学部史学科 | 全体の評定平均4.0以上 もしくは、全体の評定平均3.8以上 かつ「世界史B」もしくは「日本史B」 の評定平均4.5以上 |
文学部比較芸術学科 | 全体の評定平均3.8以上 もしくは外国語の評定平均4.2以上 |
コミュニティ人間科学部 | 全体の評定平均3.5以上 |
立教大学
文学部 | 全体の評定平均4.0以上 |
理学部 | 学科の指定科目の 評定平均4.5以上 |
法学部 | 全体の評定平均3.8以上 |
観光学部 | 全体の評定平均3.8以上 |
コミュニティ福祉学部 | 全体の評定平均3.8以上 |
現代心理学部 | 全体の評定平均3.5以上 |
スポーツウエルネス学部 | 全体の評定平均3.5以上 |
中央大学
法学部 | 評定平均の基準無し |
文学部 | 評定平均の基準無し (指定の英語資格、検定試験の基準あり) |
国際経済学部 | 全体の評定平均3.8以上 |
法政大学
文学部 | 全体の評定平均3.8以上(日本文学科) 全体の評定平均4.0以上(地理学科) |
人間環境学部 | 全体の評定平均3.5以上 |
スポーツ健康学部 | 全体の評定平均4.0以上で、 「数学」が4.0以上 かつ「理科」1科目4.0以上 |
現代福祉学部 | 全体の評定平均3.8以上 |
キャリアデザイン学部 | 全体の評定平均3.8以上 |
情報科学部 | 全体の評定平均4.0以上 かつ「数学」「理科」それぞれ4.3以上 平均3.5以上 |
理工学部 | 全体の評定平均4.0以上(航空操縦学専修) |
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評定平均を上げるための対策は?
評定平均については、ぼんやり分かったけど、実際、評定平均を上げていく対策ってあるの?
評定平均はこれまで述べてきたように、高校3年間トータルの評定が関わってきます。
そのため、高校1年生からコツコツと積み上げていくことが肝心です。
とはいっても、高校一年から推薦を意識して過ごす人は、なかなかいませんよね。
評定平均の存在を意識するのは、もっと学年が上がってからという人も多いでしょう。
その場合、どのように評定平均の対策をしていけばよいでしょうか?
評定がどのように付けられているのかを具体的に知る
解説したように、現行の学習指導要領では、定期考査だけの結果で評定を出さない仕組みになっています。
成績は
- 「主体的に学習に取り組む態度」
- 「知識及び技能」
- 「思考力・判断力・表現力」
の3観点を元に付けられています。
各観点の特徴を知ることで、評定平均を上げることにつながります。
では、具体的に各観点でどのようなことを評価材料としているかを見ていきたいと思います。
まず「主体的に学習に取り組む態度」です。
この観点は、授業の振り返りシートや提出物、授業の態度や課題の成果で評価する学校が多いです。
漢字テストや計算テストなど「とにかく取り組めば得点につながるテスト」をこの観点で見ている学校もあります。
普段の取り組みの丁寧さが、評価を上げるポイントといえます。
次に「知識及び技能」です。
この観点は、定期考査や小テストなど、筆記試験による成果を評価する学校が多いです。
つまり「テストの点数を上げること」が重要な観点といえます。
最後に「思考力・判断力・表現力」です。
この観点は、定期考査、レポート、スピーチ、ディベート、話し合いの成果を評価する学校が多いようです。
話すことが苦手な人はレポートで、書くことが苦手な人はスピーチや表現で点数を上げることがポイントといえるでしょう。
各観点の評価のつけ方は、授業の最初に担当教諭から説明があるはずです。
学期の終わりに渡される通知表には、5段階の評定の他に2022年度から「観点別評価」も記載する決まりとなっています。
どの観点の点数が取れていて、どこが不足しているか分析することが対策につながると思います。
評定平均を上げるための対策の1つとして、各観点の取り組みを今一度見直してみることが重要であるといえます。
学年末考査に対する意識を上げる
学年末考査で力をいれるべき科目をしっかりと絞ることも、評定平均を上げるために必要な対策です。
評定平均は、各学年の学年末の通知表の成績が元となります。
これは3学期の成績(後期の成績)という意味ではありません。
学年末の成績は、1・2学期(前期)も合わせた1年間の平均です。
では、なぜ最後のテストが大切なのでしょうか。
3学期制の場合、1・2学期の評定が4の場合、3学期に5がつく可能性はそう高くありません。
逆に1学期が5、2学期が4の場合は、3学期に5がつく可能性は大いにあります。
そういった科目を見落とさずに、そこに力をいれて学習することが評定を上げることにつながると言えます。
もちろん4→4→5となる生徒もいます。
1・2学期の「4」が5に近い4だった場合です。
自分の評定がどの位置なのかは聞けば必ず教えてくれます。
成績開示は、求められれば学校側は断ることができない義務です。
高校のテストは科目数も多く、すべてに力を注ぐことは難しいと思います。
自分の評定についてしっかりと把握・分析し、学年末考査で力をいれるべき科目をしっかり絞る。
これが評定平均を上げるための対策といえるでしょう。
苦手科目の独学をやめる
高校受験は国社数理英の5教科です。
科目数も少ないため、独学で対応できる児童生徒は多いです。
また、全員が同じ教科を学習し、受験するため友達同士教え合う経験をした人もいるかもしれません。
ですが、高校では科目数が増え、より専門的な内容になります。
理系・文系、履修する科目でクラスが分かれます。
受験科目も、大学やコースによって人それぞれ違います。
この状態で、苦手科目を独学で対応するのはかなり難しいといえます。
逆に、独学で行ってきたからこそ苦手になってしまったケースも多いように感じます。
上で説明した「定期考査に対する対策」もそうですが、塾や予備校は個々に応じた分析に長けています。
受験に特化していて、大学入試に対して、独自の分析やノウハウを持っていることは確かです。
また、科目やコースごとにスケジュールが決まっていて、先を見越して取り組むことが可能です。
進路に向けた相談や、先輩方からの経験談を聞くこともできます。
私は元学校の教員ですが、学校は学習だけでなく生活を学ぶ場でもあります。
それに対して、塾・予備校は学力を上げるための場所です。
講師はそのためのプロです。
自分の苦手な科目、または定期考査前にどの教科・科目に力を入れるかの分析も含めて、プロの力に頼ることも合理的な手段だと思います。
最後に
この記事では、評定平均について
- 具体的になんなのか?
- どう計算されているのか?
- 総合型選抜(AO入試)や学校推薦の際、どのような影響があるのか?
- 評定平均を上げるための対策は?
について解説しました。
総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜を導入する大学は、これからまだまだ増えると予想されます。
コツコツと受験対策を行い、一般入試で勝負するのはもちろん素晴らしいですが、せっかくある制度を利用するのも非常に合理的な選択です。
積極的に利用していきましょう。
この記事がこれから受験される方の参考になることを願っています。