大学受験の時、総合型選抜とかAO入試とか、学校推薦とかいろいろあるよね。違いがよく分からないから教えてほしい
そうですよね。
たしかに名前だけ聞いても違いがよく分からない方が多いと思います。
そして『違いが分からない』という理由だけで、大学受験を一般入試一本で頑張る高校生も少なくありません。
実際は、この違いを知っているだけで大学受験の際に
- 他の生徒と差をつける大きな武器になる
- 入試の選択肢を増やすことができる
ことは間違いありません。
今回この記事では、元教師の筆者が、
- そもそも総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜とはなにか?
- 総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜の違いはなにか?
具体的に解説していきます。
この記事を読んでわかること
- 総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜について具体的に解説していきます
もくじ
総合型選抜(旧AO入試)とは?
まずは総合型選抜について解説していきます。
総合型選抜とは?
総合型選抜とは、
- 入学者の能力
- 学習意欲
- 目的意識
などを書類や面接を通して総合的に評価する入試方法のことです。
文部科学省が公示している「令和4年度大学入学者選抜実施要項」によるとポイントは3つ。
要約すると以下のようになります。
- 入学志願者本人が記載した資料を積極的に活用する。
- 入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価する。
高度な専門知識を要する学部や学科では、その知識が活かせる職業分野を目指すための意欲・適性を特に重視して評価する。 - 調査書などの書類だけでなく、大学入学共通テストやその他の評価方法(小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技など)からどれか1つは必ず活用すること。
さらに、面接については「時間をかけた丁寧な面接等」と表記がされています。
このことから、
- 入学志願者の記載した資料を見つつ
- 面接等の試験科目で入学志願者の意欲や適性を多面的に評価し合否を決める試験
であることが分かります。
AO入試とは?
AO入試とは、総合型選抜の前身となる入試方法で、
- 高校での成績
- 面接・小論文
で入学志願者の能力や意欲を評価していました。
AOとは「Admissions Office」の略で「入学管理局」という意味の語句です。
つまり、志願者を学力以外の面(意欲や能力)からも評価し、各大学が求める学生像(アドミッション・ポリシー)に合致する人を選ぶことができる試験だったと言えます。
総合型選抜とAO入試の違いは?
AO入試は2000年ごろから徐々に導入された入試方法ですが、多くの大学がAO入試を取り入れるにつれて2つの問題点が浮上しました。
- 学力以外を重視する傾向が大学、志願者ともに強くなってしまった
- 早くに合格を発表する大学があったため、合格者が高校を卒業するまでの学習意欲が低下した
これらの問題を解決すべく、
- 書類や様々な形式の試験から学力も評価する
- 合格発表を11月以降に設定する(そうすることで、合格者の学習意欲を卒業まで維持させる)
という内容を盛り込んだ総合型選抜へと変わりました。
入学志願者にとって「何らかの形で学力も評価されるようになった」というのが学力以外の評価基準が高かったAO入試から総合型選抜に変化した際の大きな違いと言えるでしょう。
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学校推薦型選抜とは?
『学校推薦型選抜』とは、なんでしょうか?
学校推薦型選抜は、学校からの推薦書類が必要となる入試方法のことです。
「推薦入試」なら知っているという人も多いのではないでしょうか。
「AO入試」が「総合型選抜」ヘと改名されたのと同様に、2021年度の入試より「推薦入試」から「学校推薦型入試」へと名称が変更されています。
名称は変更されましたが、内容はほとんど変わりません。
「令和4年度大学入学者選抜実施要項」によると、
- 『出身高等学校長の推薦に基づき,調査書を主な資料としつつ,以下の点に留意して評価・判定する方法』
とされています。
「以下の点」として2項目挙げられているのですが、要約するとこのようになります。
- 調査書や推薦書などの書類だけでなく、大学入学共通テストやその他の評価方法(小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技など)からどれか1つは必ず活用すること。
- 推薦書には成績や活動歴を踏まえた評価の他に、指導に配慮が必要な点などがあれば高校に記載を求めること。(高校側が行うことなので、受験者が気にする項目ではありません。)
1つ目の点は、総合型選抜のポイントでも挙げたものと引用元の記述が全く同じでした。
つまり、総合型選抜にしろ学校推薦型選抜にしろ、学力が評価の観点の一つとして重要視されていることが分かります。
総合型選抜と学校推薦型選抜の違いってなに?
それでは、「総合型選抜」と「学校推薦型選抜」の違いはなんでしょうか?
まず挙げられるのは、高校の学校長の推薦の有無です。
これまで見てきたように、
- 学校推薦型選抜は学校長からの推薦が必要ですが、総合型選抜では必要ありません。
この違いによって、それぞれの試験に向いている人も異なってきます。
「学校推薦型選抜」に欠かせない学校長からの推薦を受けるには、高校3年間の全科目の評定平均が指定された数値を超えていることが求められます。
つまり、高校入学時から継続して良い成績を満遍なく収め続けられる人は推薦をもらいやすく、学校推薦型選抜に向いているタイプと言えます。
では、「総合型選抜」に向いているのはどのような人かと言うと、希望する大学の求める学生像(アドミッション・ポリシー)に合致するような活動・実績を残し、それを小論文やプレゼンテーションなどの試験科目でもアピールすることができる人です。
また「令和4年度大学入学者選抜実施要項」では総合型選抜にのみ「時間をかけた丁寧な面接等」という表記がありました。
総合型選抜ではその丁寧な面接等の試験科目に根気強く、自分の強みをアピールし続けられる人が適していると言えるでしょう。
総合型選抜と学校推薦型選抜のメリット・デメリットは?
ここまで総合型選抜と学校推薦型選抜、それぞれの説明や違いについて述べてきました。
この項では、各試験のメリットとデメリットについてお話しします。
総合型選抜のメリット・デメリット
総合型選抜のメリットは、学科以外の自分の得意分野を活かすことができることです。
志望する学部や学科に合うものであれば、
- 部活動の成績
- ボランティア
- 資格の取得
- 表彰の経験
などを総合型選抜で活かすことができます。
さらに、それらが高校三年間を通して積み上げてきたものであればより強くアピールできます。
総合型選抜では自分で作成した資料を武器として臨みます。
調査書に書くためだけに取得・経験した資格や活動では頼りなく思うことでしょう。
好きだと思えるもの、より深く知りたいと思わされることに出会ったら、なるべく早く取り組み、自信をもってアピールできる様な形にしましょう。
一方、デメリットは入学後の学力のギャップに悩む場合があるということです。
総合型選抜では、学科以外の強みを評価されることで合格を掴み取ることができます。
ただ、それは総合型選抜で合格した人だけに当てはまることで、一般選抜の合格者は学科試験による成績で入学します。
そうすると、総合型選抜の合格者と一般選抜の合格者の間に学力格差が生まれることがあります。
講義によってはテストで成績をつけるものもあるので、単位取得に苦しむこともあるかもしれません。
そのような事態を防ぐために、総合型選抜で合格した後も入学する学部・学科に関わる分野の勉学を怠らないようにしましょう。
学校推薦型選抜のメリット・デメリット
学校推薦型選抜のメリットは、高校三年間の学科の成績が評価されることです。
総合型選抜との違いを説明するときにも挙げたように、学校推薦型選抜は高校一年生からの優れた成績(高校が提示した評定平均以上)をもっていることが出願の条件となります。
つまり、高校入学時からコツコツと勉強に励んでいれば、一般選抜に加えて学校推薦型選抜を受験でき、合格の可能性を高めることができます。
一方、デメリットとしては、指定校制の場合は高校内での選考が厳しいこともあるということです。
学校推薦型選抜は、公募制(大学から学校の指定がないタイプ)と指定校制(大学から学校の指定があるタイプ)に分けられます。
その中でも、指定校推薦は高校内で毎年推薦できる人数が限られているため、希望者が推薦できる人数を超えている場合、校内選考が行われます。
校内選考を通過すれば、志望校に合格する可能性がきわめて高くなります。
逆に、校内選考を通過しなければ、学校推薦型選抜を受験することすらできません。
どの教科でも上位の成績を収めつつ、模範的な生活態度で過ごすことが、校内選考を有利に進めるポイントです。
総合型選抜・学校推薦型選抜に共通する注意事項
次に、どちらの試験にも共通する注意事項を2つお伝えします。
1.合格したら必ず入学しなければならない
ほとんどの大学が専願制であるため、合格したら必ずその大学に入学しなければならないことです。
合格後に覚悟が揺るがないように、入学後の生き生きした自分の姿が想像できるような大学を選びましょう。
2.不合格だった場合、一般選抜の対策が遅れる
総合型選抜と学校推薦型選抜、どちらにしても不合格になる場合がもちろんあります。
その際、次に受験することになる一般選抜向けの対策が、他の受験生より遅れてしまいます。
総合型選抜や学校推薦型選抜への受験を決めたとしても、受からなかった場合を想定し、一般選抜のための受験勉強も並行して取り組むことを強くおすすめします。
以上のことを念頭に置いて、自分に向いている入試方法を選びましょう。
総合型選抜の試験内容は?
ここからは、総合型選抜についてより詳しく説明します。
具体例がある方が理解しやすいので、この記事では2023年度慶應義塾大学法学部総合型選抜(FIT入試)B方式を例として挙げています。
志望理由書・調査書などの書類選考・面接・小論文
総合型選抜の各選考についてみていきましょう。
書類選考(第一次選考)
総合型選抜は第一次選考として書類選考が行われます。
全ての入試方法で必要な願書に加え、高校に作成してもらう調査書、受験生自身で作成する志望理由書や活動報告書などがありますが、大学によって種類や名称が異なる場合があるので、志望大学の募集要項で確認しましょう。
2023年度慶應義塾大学法学部総合型選抜(FIT入試)B方式では、
- 「志望確認票」
- 「志願者調書」
- 「志望理由書」
- 「評価書」
- 「調査書」
が出願書類として提示されています。
書類の種類が多いので、早めの準備が必要だと言うことがわかります。
また、インターネット出願を取り入れている大学もあります。
慶應義塾大学大学法学部総合型選抜(FIT入試)では、インターネット出願と出願書類の郵送の両方を行わないと出願が完了しません。
インターネットで行う作業も取りこぼしがないように、保護者や先生と確認しておきましょう。
第二次選考
総合型選抜の第二次選考は、入試方法の中で最もバリエーションが豊富です。
「令和4年度大学入学者選抜実施要項」で例として挙げられているのは、
- 大学入学共通テスト
- 小論文
- プレゼンテーション
- 口頭試問
- 実技
- 各教科・科目に係るテスト
- 資格・検定の成績
と様々です。
例えば、2023年度慶應義塾大学法学部総合型選抜(FIT入試)B方式だと
- 「総合考査」
- 「面接試験」
が課されています。
総合考査は小論文と各教科・各科目に係るテストを合わせたもので、面接試験は口頭試問に該当します。
志望大学の過去問はもちろん、類似した試験を行う大学の過去問も活用して対策できると良いでしょう。
出願条件は?
学校長の推薦が出願条件となる学校推薦型選抜に対し、総合型選抜の出願条件はやや緩やかで、より多くの人に当てはまりやすい条件が提示されます。
大学によって異なるので、条件が自分に当てはまるか一つずつ精査する必要があります。
2023年度慶應義塾大学法学部総合型選抜(FIT入試)B方式の場合、要約すると
- 高校3年生または既卒生
- 慶應義塾大学法学部での勉学を強く希望する者
- 入学を確約できる者
- 在籍している(していた)高校から調査書と評価書の発行を受けられる者
- 高校全期間の成績の評定平均が大学の指定する教科及び全体どちらも4.0以上の者
となっています。
以上の条件の中で、募集要項で太字で記載されていたのが
- 「学部での勉学を強く希望する者」
- 「入学を確約できる者」
- 「評定平均が4.0以上の者」
の3つです。
これらはどの大学でも特に重視している出願条件といえます。
自分の関心分野をこの学部・学科で極めたいという思いを、余すところなく伝えましょう。
評定平均については、次の項目で具体的に解説していきます。
評定平均とは?
総合型選抜を受ける上で、評定平均が出願条件として設けられていることがあります。
評定平均とは、
- 高校1年生1学期から高校3年生1学期までの全科目の評定(5段階評価)の平均
を指します。
国数英理社といった5教科だけでなく、保健体育や音楽などの副教科の評定も全て足し、履修した科目数で割ることで計算できます。
例えば、一年間の成績が
- 国語:5
- 数学:4
- 英語:4
- 理科:3
- 地理歴史:3
- 公民:4
- 保健:5
- 体育:4
- 音楽:4
- 情報:5
- 家庭科:4
だとすると、
- (5+4+4+3+3+4+5+4+4+5+4)÷11=4.09…≒4.1
となり、評定平均は4.1と計算することができます。(小数点第二位を四捨五入し、小数点第一位までで表します。)
実際は数学や英語などは複数科目を履修するはずなので、割る数はより多くなるでしょう。
慶應義塾大学法学部総合型選抜B方式の出願資格には「高等学校等の全期間の成績を記載した調査書における指定の各教科および全体の学習成績の状況が4.0以上の者」とあります。
指定の各教科には「外国語、数学、国語、地理歴史、公民」とあったので、上の例で見てみると、
- 指定の各教科(5+4+4+3+4)÷5=4.0 ⇒ 出願可能
- 全体4.1 ⇒ 出願可能
となり、出願資格を満たしていると言えます。
このように大学によっては指定教科の評定平均も出願資格に取り入れることがあるので、募集要項を注意深く確認するようにしましょう。
スケジュール
総合型選抜試験の一般的なスケジュールは、以下のようになります。
- 出願手続き(9月〜)
↓ - 入試(9月〜2月)
↓ - 合格発表(11月〜)
これは、文部科学省が公示している「令和4年度大学入学者選抜実施要項」によって、
- 「総合型選抜については,入学願書受付を令和3年9月1日以降とし,その判定結果を令和3年11月1日以降に発表する。」
と決められているからです。
2023年度慶應義塾大学法学部総合型選抜B方式で見てみると、
- 出願書類受付期間:2022年9月1日〜9月5日
- 第1次選考(書類選考)合格発表:2022年9月18日
- 第2次選考:2022年9月25日〜
- 第2次選考合格発表:2022年11月1日
となっています。
文部科学省が定めた最速の時期で実施していることが分かります。
出願書類を郵送する場合、締切日消印有効となっている大学が多いとは思いますが、なるべく設定された期間の初日に郵送するようにし、万が一料金不足で返送されたなどのトラブルに対処できるようにしておくのが無難でしょう。
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総合型選抜の対策はどうしたらいいの?
これまで説明してきた総合型選抜を、いざ受験するとなったらどのような対策が必要なのでしょうか。
大きく2つに分けてお話しします。
興味関心のある事柄について深く探求する
総合型選抜は、学部や学科のアドミッションポリシーに適した学生であること、入学後に学ぶ分野への学習意欲や探究心をもっており、それを高校時代から発揮していることを学科試験よりも重視されます。
大学生になったら学びたいことを高校一年生・二年生のうちに見つけたら、すぐに行動すると良いでしょう。
本を読むなど、知識のインプットだけでなく、自分で実践・実験を繰り返したり、それらの結果を他者に発表するなど、アウトプットの方を重視した方が志望理由書で書けることが増えます。
総合型選抜を受ける上で最も重視したい対策です。じっくり時間をかけましょう。
第二次選考の対策
「1.興味関心のある事柄について深く探求する。」を充実させ、自分のアピールポイントが明確になったら出願書類も完成させることができるはずです。
その次の段階の対策が、第二次選考に向けた勉強・練習となります。
第二次選考は大学入学共通テスト、小論文やディベート、プレゼンテーション、面接など大学によって様々です。
大学入学共通テストであれば一般選抜を受ける人と同じように学科の勉強が必要ですし、それ以外であれば、専門分野に関する知識や高校時代に培った実績を分かりやすく伝える練習が欠かせません。
大学入学共通テスト以外は、知っていることや伝えたいことを文章や発言によって表現する力が必要です。
そのためにも、興味関心のある事柄について発表するような機会を積極的に作り、経験と自信を積み重ねておきたいものです。
ともかく、総合型選抜を受験するなら「1.興味関心のある事柄について深く探求する。」ことに一番時間を費やし、自分にしかないアピールポイントを育てましょう。
学校の施設や先生のみならず、専門家や外部の施設など、利用できるものは残さず使い、
「今の私に使えるものは全て使いましたが、それでも知りたい(研究したい)ことがまだあります。そのためにこの学部・学科に入りたいんです。」
と胸を張って言えるような状態を目指しましょう。
最後に
今回は、総合型選抜(AO入試)と学校推薦型選抜について解説しました。
興味関心のあることをアピールする総合型選抜、高校三年間のテストの成績を利用できる学校推薦型選抜、どちらも特色ある入試方法だということがお分かりいただけたかと思います。
それぞれの入試方法の特徴を踏まえた上で、自分に向いている方の入試方法は何か、学校や家族と相談してみてください。
みなさん一人一人のもっている強みが、入試で最大限に活かされることを願っています。