
『慶應高校と慶應義塾高校って違う学校?』という質問をたまに聞きます。
結論から言うと『慶應高校と慶應義塾高校は同じ高校のこと』といえます。
しかし、同じだからと言って慶應義塾の付属高校は一つではなく、複数あることはご存じでしょうか?
『慶應義塾大学』といえば日本でも知らない人がいないくらい有名な大学です。
大学は1校しかありませんが、慶應義塾付属の中学・高校は、男女別学・共学校、中高一貫・高入のみなど 計7校 の附属中高があり、入試制度・内部進学率・学費・校風が大きく異なります。
この記事では 「慶應大学付属中学・高校の違いを一覧」で紹介していきます。
もくじ
慶應義塾の付属校とは?まず押さえておきたい基礎知識

慶應義塾には、中学3校・高校4校、計7校の付属校があります。
全校、大学までの一貫教育・内部進学制度を備えている点が最大の特徴です。
付属校に入学すれば、所定の成績と評定を満たすことでほぼ全員が慶應義塾大学へ進学可能なため、首都圏でも屈指の激戦校として毎年高い人気を誇ります。
また、男女別学、共学、中高一貫か高入のみか、学校の所在地は学校ごとに大きく異なります。
7校の概要を一覧にしてみました。
- 慶應義塾普通部(男子・神奈川県横浜市港北区|1898年創立)
- 慶應義塾中等部(共学・東京都港区三田|1947年創立)
- 慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部(共学・神奈川県藤沢市|1992年創立)
- 慶應義塾高等学校(男子・神奈川県横浜市港北区|1949年設置)
- 慶應義塾志木高等学校(男子・埼玉県志木市|1957年改称)
- 慶應義塾女子高等学校(女子・東京都港区三田|1950年創立)
- 慶應義塾ニューヨーク学院(共学・米国ニューヨーク|1990年創立)
付属校の卒業生は、年度や学部ごとに多少の変動はあるものの、毎年ほぼ95〜100%が内部推薦で慶應義塾大学へ進学しています。
ただし、評定平均や科目ごとの基準を満たさない場合は希望学部に進めないこともあるため、在学中はしっかり学習していかないとなりませんね。
次章では、ニューヨーク校を除く各校の詳細を紹介していきます。
慶應義塾付属中学の詳細

まずは、慶應義塾付属中学各校を紹介していきます。
慶應義塾普通部

所在地 | 神奈川県横浜市港北区日吉本町1丁目45-1 |
URL | https://www.kf.keio.ac.jp/ |
学校種別 | 男子校 |
概要:1898年に慶應の一貫教育体制が確立した際に中等教育課程として誕生した最古の附属中学です。
所在地はJR横浜線・東急東横線 日吉駅(神奈川県横浜市港北区)から徒歩約10分。
学年定員は約180名の男子のみ。
伝統行事「労作展」や実験重視の理科など、自ら学び考える“労作教育”が特色です。
入試要点(2025年度)
・2月1日実施/募集180名
・4科目(国・算・社・理)各100点+本人面接+体育実技
・実質倍率は例年3倍前後 ※学内公表データより推定
内部進学:高校が併設されていないので、卒業後は慶應義塾系列の高等学校から選択し進学することが可能です。高校卒業後は慶應大へ推薦進学が可能です。
慶應義塾中等部

所在地 | 東京都港区三田2-17-10 |
URL | https://www.kgc.keio.ac.jp/ |
学校種別 | 共学校 |
概要:1947年、戦後初の男女共学校として開校。
港区三田(慶應大学三田キャンパス隣接)にあり「自由闊達・自主自律」を掲げています。
入試要点(2025年度)
一次:三田キャンパス/二次:中等部校舎
・募集 約180名(男女比概ね6:4)
・4科目(国・算・社・理)+体育実技+面接(保護者同席)
・2024年度納入金目安:1,465,000円(入学金+初年度諸費用)
内部進学:卒業後、男子は慶應義塾高 or 志木高。女子は慶應女子高にほぼ全員が推薦進学します。
高校卒業後の慶應大内部進学率は95%超を維持しています。
慶應義塾湘南藤沢中等部

所在地 | 神奈川県藤沢市遠藤5466 |
URL | https://www.sfc-js.keio.ac.jp/ |
学校種別 | 共学校 |
概要:1992年に湘南藤沢キャンパス(SFC)内に開校した附属校です。
完全中高一貫で、中等部1年~高等部3年を「1年生~6年生」と呼びます。
BYODを認めるICT先進校として、600台以上の貸出端末と校内Wi‑Fiを整備。
英語母語教師による授業や探究型学習も特徴です。
入試要点(2025年度)
・募集約100名
・2月2日実施/3科or4科選択制(国・算・社・理)
内部進学:6年一貫課程を修了すれば、ほぼ100%が慶應大学へ推薦進学します。
学部選択は成績と本人希望を総合的に考慮して決定します。
慶應義塾付属高校の詳細

まずは、慶應義塾付属高校各校を紹介していきます。
慶應義塾高等学校

所在地 | 神奈川県横浜市港北区日吉4-1-2 |
URL | https://www.hs.keio.ac.jp/ |
学校種別 | 男子校 |
概要:1948年に第一・第二高等学校として設立され、翌1949年に統合・現校名へ改称。
巨大キャンパスを持つ日吉(神奈川県横浜市港北区)に位置し、各学年18クラス・生徒総数約2,200名というマンモス校です。
「日吉協育モデル」やSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定を活かした探究活動が有名。
入試要点(2025年度)
・募集男子330名+帰国生40名程度
・2月10日 第1次筆記(国・数・英60分×各100点)
・2月13日 面接(第1次合格者)
・実質倍率は例年3倍程度です。
内部進学:慶應大への推薦進学率は毎年95%超。
医学部や法学部など人気学部は評定上位者が優先されるため、定期テスト対策がカギとなります。
慶應義塾志木高等学校

所在地 | 埼玉県志木市本町4-14-1 |
URL | https://www.shiki.keio.ac.jp/ |
学校種別 | 男子校 |
概要:前身の慶應義塾農業高等学校を改組し1957年に発足。
埼玉県志木市の15万㎡超の豊かな自然環境を活かし、収穫祭や24言語講座などユニークなプログラムを展開する男子校です。
入試要点(2025年度)
・一般・帰国生で約190名募集(自己推薦40名別枠)
・(一般)2月6日 筆記(国・数・英)
・(一次試験合格者は)2月11日 面接
・志望理由や課外活動を重視する「自己推薦入試」あり。
内部進学:3年間の評定により慶應大10学部への推薦が決定。
文・経・法・商学部への進学者が多いのが特徴です。
慶應義塾女子高等学校

所在地 | 東京都港区三田2-17-23 |
URL | https://www.gshs.keio.ac.jp/ |
学校種別 | 女子校 |
概要:1950年開校。東京・三田キャンパス隣接で、1学年70名×3学年の女子校。
「独立自尊」自由・開発・創造を教育理念に、第二外国語必修や海外研修など語学教育に定評があります。
入試要点(2025年度)
・一般入試の募集は女子約70名
・2月10日 筆記(国・数・英+作文)+面接なし
・実質倍率は毎年3倍前後。
内部進学:卒業生のほぼ100%が慶應大へ推薦。医学部・薬学部・看護医療学部を含む全学部に道が開けています。
慶應義塾湘南藤沢高等部

所在地 | 神奈川県藤沢市遠藤5466 |
URL | https://www.sfc-js.keio.ac.jp/ |
学校種別 | 共学校 |
概要:1992年、SFC(湘南藤沢キャンパス)に中高一貫校として開校。
探究×ICT×英語に特化したカリキュラムで、BYOD端末600台・校内Wi‑Fiなど圧倒的なデジタル環境を誇ります。
入試要点(2025年度)
中高一貫校のため、基本的に高校からの募集はありませんが、全国枠として「小学校6年生から中学校3年生までの全期間( 4年間)以上、神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県以外の国内・国外の地域に在住した人に限り出願できます。
・全国募集若干名
・2月10日一次書類選考の結果発表
・2月12日二次試験として面接
内部進学:6年一貫課程のため、高等部在籍者のほぼ100%が慶應大へ進学。
総合政策・環境情報をはじめSFC系学部への進学割合が高い点が特色です。
中学受験 vs 高校受験!入試制度と偏差値を比較

では、この項では、各校の入試制度と偏差値を比較していきます。
試験日程・科目・方式の違い
中学受験(普通部・中等部・SFC中)の場合、
- いずれも、日程が2月1日~3日に集中します
- 4科型(国・算・社・理)が基本です
- 普通部のみ体育実技+本人面接を課す点が特色です。
一方で 高校受験 は、
- 2月6日(志木)
- 2月10日(塾高・女子)
- 2月12日(SFC高)
と日程が分散し、
- いずれも 3科型(英・数・国)+面接または小論文
が中心です。
塾高は一次試験=筆記、二次試験=面接の 二段階選抜 を採用しています。
最新偏差値・競争倍率の動向
各校の偏差値・倍率を表にまとめます。
偏差値(2025年度模試換算)
学校名 | 偏差値 |
---|---|
慶應義塾普通部 | 68(四谷大塚) |
慶應義塾中等部 | 71(四谷大塚) |
慶應義塾湘南藤沢中等部 | 69(四谷大塚) |
慶應義塾高等学校 | 75(みんなの高校情報) |
慶應義塾志木高等学校 | 75(みんなの高校情報) |
慶應義塾女子高等学校 | 76(みんなの高校情報) |
慶應義塾湘南藤沢高等部 | 75(みんなの高校情報) |
競争倍率(2025 実績)※基本的に一般枠の数字です。
学校名 | 倍率 |
---|---|
慶應義塾普通部 | 受験者数630 / 合格者189=約3.33倍 |
慶應義塾中等部 | 受験者数994 / 合格者196=約5.07倍 |
慶應義塾湘南藤沢中等部 | 受験者数523 / 合格者123=約4.25倍 |
慶應義塾高等学校 | 受験者数1,115 / 合格者414=約2.69倍 |
慶應義塾志木高等学校 | 受験者数1,126 / 合格者337=約3.34倍 |
慶應義塾女子高等学校 | 受験者数395 / 合格者148=約2.66倍 |
慶應義塾湘南藤沢高等部 | 受験者数117 / 合格者53=約2.20倍 |
偏差値は模試によって±1~2のブレがあるものの
- 高校受験の偏差値帯:75~76
- 中学受験の偏差値帯:68~71
いずれにせよ、このレベルになると最難関校なので微差は関係なく、偏差値で「中学受験、高校受験どちらがよい?」とは言えない感じです。
倍率については、中学は普通部・中等部ともに3~5倍前後、高校は3倍前後で推移する傾向が見られます。
内部進学枠と他大受験の可否
全校はいずれも「推薦による慶應義塾大学への内部進学枠」を事実上全員分保有しており、各学部へは 学年評定+校内テスト+面接 で振り分けられます。
- 進学率は 中学→高→大学の一貫組で 95~100%。
一方で 他大学受験 は推薦権を放棄すれば可能ですが、毎年数%程度にとどまり、医学部(国公立)の受験や海外大学進学など明確な目的がある生徒のみがチャレンジするのが実情です。
推薦権放棄後は慶應大の再受験はできないため、学内では慎重に判断が求められます。
大学内部進学率と推薦条件の違い

この項では、大学内部進学実績・進学率と推薦条件について詳しく解説します。
学部別進学実績
直近公開データから、4高校の主要学部への推薦者数を抜粋しました。
いずれも 進学率 95~100% と極めて高く、学部枠は 学校ごとに設定 されています。
学校 | 卒業生 | 文 | 経 | 法 | 商 | 医 | 理工 | SFC系※ | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
慶應義塾高 2024 | 735(726が内部進学) | 27 | 210 | 224 | 95 | 22 | 109 | 38 | 1 |
慶應義塾志木高 2024 | 228 | 10 | 80 | 74 | 18 | 7 | 40 | 4 | 2 |
慶應義塾女子高 2024 | 非公表 推定200± | 12 | 60 | 54 | 16 | 5 | 24 | 31 | 5 |
慶應 SFC 2023 | 241 | 12 | 69 | 64 | 12 | 7 | 39 | 27 | 11 |
各校とも 医学部・看護医療学部・薬学部 は枠が極小で最難関です。
希望が集中する学部では内部選抜が行われ、評定上位者が優先されます。
推薦基準(評定・テスト・面接)
続いて大学への推薦基準です。(当サイトが様々な情報を元にまとめたものです。若干、事実と違っている部分もあると思いますが、参考程度にしてください)
評定平均
- 塾高:「進級に必要な成績を維持していれば推薦可」=評定 7段階6.0前後が実質ボーダー
- 志木高:評定5段階×9教科=38/45 が自己推薦入試の基準。内部推薦もこれに準じる
- 女子高:評定9教科オール4以上が推奨ライン(推薦入試要項より)
- SFC高:定期試験+校内実力試験の総合順位で配点。評定基準は非公開だが、医学部や経済学部は学年上位 15%目安
校内試験・面接
- 全校:高3の秋~冬に「学部適性試験」(英語・数学中心)を実施。医学部は理系記述、法学部は社会・小論文を追加。
- 面接は担任・進路指導部が実施し、志望理由と学部適性を確認。
出席・素行
- 欠席・遅刻が多い場合は推薦保留。特に志木高は「欠席 30日以内」の規定あり。
他大学受験
- 推薦を辞退すれば自由に受験可能。ただし 再度慶應大を一般受験することは不可。
学費・初年度納入金・奨学金を徹底比較

慶應義塾付属校の学費は、一体どの程度かかるのでしょうか?
2025年度版を7校分まとめて一覧にしてみました。
数字は慶應義塾公式 PDF の初年度納付金(入学金+学費+諸会費等)をもとに整理しています。
学費・初年度納入金一覧
校名 | 入学金 (円) | 授業料 (円) | 教育充実費 (円) | その他 (円) | 初年度納入金 (円) | 在学生納付金 (円) |
---|---|---|---|---|---|---|
◆ 中学3校 | ||||||
普通部 | 340,000 | 930,000 | 210,000 | 15,000 | 1,495,000 | 1,155,000 |
中等部 | 340,000 | 930,000 | 210,000 | 15,000 | 1,495,000 | 1,155,000 |
湘南藤沢中等部 | 340,000 | 930,000 | 290,000 | 30,000 | 1,590,000 | 1,250,000 |
◆ 高校4校 | ||||||
慶應義塾高 | 340,000 | 800,000 | 210,000 | 21,000 | 1,371,000 | 1,031,000 |
志木高 | 340,000 | 800,000 | 210,000 | 47,500 | 1,397,500 | 1,057,500 |
女子高 | 340,000 | 740,000 | 210,000 | 15,000 | 1,305,000 | 965,000 |
湘南藤沢高等部 | 340,000 | 930,000 | 290,000 | 30,000 | 1,590,000 | 1,250,000 |
・初年度納入金=入学手続時に支払う総額。
・在学生納付金=2年目以降の年額。授業料は4月末と10月末の半期分納が基本。
慶應付属校で使える主な奨学金
- 小泉信三記念奨学金 ― 授業料全額または半額給付(年度更新)。
- 慶應義塾 2000年記念教育基金奨学金 ― 教育援助型:授業料半期分/国際交流援助型:海外プログラム費用実費(上限50〜100万円)。
- 銀杏の会奨学金(女子高独自) ― 年額30万円給付。
- 一貫教育校派遣留学奨学金 ― 1年間の海外派遣校学費+寮費を全額補助(中等部・高等部対象)。
- 各都道府県の授業料軽減助成金・育英資金(給付/貸与) ― 世帯年収に応じて授業料を最大約70万円支援。
いずれの奨学金も「経済的理由+学業・人物評価」が要件。
志望者は春に発表される募集要項や、進学先の事務室掲示をこまめに確認しましょう。
慶應付属を選ぶメリット・デメリット総整理

慶應義塾付属校に進学する場合のメリット・デメリットをまとめてみました。
メリット
- 大学進学がほぼ保証される安心感 7校すべてで 95~100% が慶應義塾大学へ内部推薦進学。医学・法・経済など難関学部にも校内順位で挑める。
- 探究型×グローバル教育 ─ SFCのICT先進環境や塾高のSSH指定など、各校が特色ある探究プログラム・英語イマージョンを展開。
- 圧倒的な OB・OG ネットワーク ─ 慶應三田会を中心に、就職・起業・研究で幅広い支援が受けられる。
- 自由度の高い校風 ─ 髪型・制服アレンジ・スマホ持込などが比較的寛容で、自主自律を尊重。
- 課外活動・部活が盛ん ─ 塾高のラグビー・野球、中等部の吹奏楽、志木高の農場実習など、全国トップレベルのクラブ多数。
デメリット
- 学費負担が大きい ─ 初年度130~160万円+交通費・留学費などで年間総額は180万円超も。奨学金はあるが競争率が高い。
- 評定・校内テストのプレッシャー ─ 内部推薦は成績順。人気学部は評定上位+学部試験高得点が必須で、油断できない。
- 他大学受験のハードル ─ 推薦を辞退すると慶應再受験不可。医学部・海外大など明確な目的がないと進路変更が難しい。
- 通学時間が長くなりがち ─ 志木(埼玉)やSFC(藤沢)は広域募集のため、片道90分以上通学する例も珍しくない。
- 中学 → 高校の再選抜 ─ 普通部・中等部卒は塾高/志木高/女子高などへ進学時に校長推薦枠で再割り当て。希望校に進めないリスクがある。
慶應付属校は「学費と成績管理」という2大ハードルをクリアできれば、国内屈指の進学保証・学環境・人脈を手に入れられる選択肢です。
「大学受験の負担を減らし、探究や課外活動に時間を投資したい」家庭には大きなメリットがある一方、医学部・海外大など多様な進路を模索したい場合は、推薦放棄リスクを十分に検討することが不可欠です。
最後に
この記事では「慶應大学付属高校・中学の違い」を詳しく解説しました。
慶應義塾付属校への進学は、「進学保証 × 探究環境 × OBネットワーク」という圧倒的メリットを備えています。
将来を考えた場合、最強のチケットを手に入れたようなものですが、あわせて、学費負担・成績管理・通学時間などの課題も伴います。
情報収集を早めに始め、家族で長期的なビジョンを共有することが、後悔しない学校選びといえます。